仲良く___見えた?

そんな訳ない。そんな訳、あるはずがない。




【楽園の穴 ACT.1 静かな時-2-】




「ねぇ蜜柑。それどういう意味?」


怪訝な顔で問う。さっきまで寝ていた姿ではなく、髪も整え服も制服に着替えている。
"柚季いいよ。"と後ろを向いていた柚季に一声かけた上で蜜柑に問う。
"何故、仲良くなる必要がある?"と。
それもそうなのだ、今は学園の生徒であるけれどそれ以前にZメンバーだ。
アジトに戻るまでは任務中なのだ。


「………そう、なん?なんか嬉しそうな顔していたように見えたから。」

「見えた?見えたって…居たの?」

「あ____と、うん、ごめんな。」

「そう。でも別に仲良くなったわけじゃないし。仲良くなる意味もない。」


キッパリと言い放つに蜜柑は納得したように頷いた。
彼女は他人と関係を持とうとしないから。必要以上のことは話さない。
他人の側に居るときは必ず蜜柑又は、柚季が近くに居るときだった。
だから、蜜柑は思ったのかも知れない。
彼女がキレて誰かと話したりそれを心配して、話しかけてきた相手と会話をする彼女を見て
"友達"を作る気になったのかとそう思ったのかも知れない。


「キレたことは良いと思うぜ。俺も切れかかってたし。」

「………替わりに切れた訳じゃないけどね。」

「どうも。」

「だから、替わりじゃない。」


そんな言い合い。蜜柑は蜜柑で、それを暖かく見守っていた。なにかを勘違いしているようだけれど。
こんな生活が嬉しかった。初めて感じたから、心を閉ざして初めて感じた友情。
けれどそれは、世界が同じだったから。住む世界が違う人はとくに馴れ馴れしくする必要はない。


___必要はないの___?

必要?


寮を出、教室まであと少しの廊下で自分自身に問う


「必要って何?」

「不必要って何?」


教室の扉を開ける。
…と、そこに見えたのはドアから見える青空。
カーテンが風に靡き教室に朝の空気を入れている。
さわやかな朝。


あの日と同じ。




___________要らない。

___________わたしの子?ふざけないで!

___________子供を産んだ覚えなんて無いわっ…!!

___________出て行って

___________出て行って




…………っ、なんで出てくるのよ。

知らないわ、あんな人。顔も覚えていない、母親。名前も知らない。

知らない シラナイ 知らない シラナイ 知らない シラナイ 知らない シラナイ 知らない シラナイ。

知らないっ…!!




『あなたなんて必要ないのよ。』




なんで______.....





そこで記憶は途切れている。気絶したと気付いたのは目が覚めてから。
目が覚めたのは、真っ白な病室。壁もベットもシーツも何もかもが真っ白の ビ ョ ウ シ ツ 。

深紅に近い瞳は虚ろ虚ろに辺りを眺める。
そして、風を感じる方…誰かが開けたのであろう窓の方を見る。
気持ちの良い光景。けれどそれは…



キモチガワルイ



にとってもは辛い…否、気持ちが良い光景ではなかった。
今日は特に。

幸せだった日。嘘のように幸せだった日々。
失ったものの大きさ。狂い始めた日々。そして、1人になった。


       否定

                  拒絶

   苦痛


嬉しさも、楽しさも、喜びも、、、感じなくなったあの頃。
それを思い出す苦痛。あの頃の苦痛。
全てを否定され、全てを拒絶したくなる。
そんな想いへの苦痛。


ジュバッ....


能力:泡。
消してしまいたい気持ちもあるけれど、汚すだけで十分。
そこまで、自分を失ってない。


自分自身に言い聞かせるかのように繰り返し繰り返し呟く。
幼き日にあった病室での記憶とそれからの生活、そして今までの自分への否定と拒絶。
そんな想いを思い出す自分に記憶に全てに苦痛を感じたのであろう。
だから、穏やかにながれる風の流れが目に見える風景が気持ちが悪くなったのかも知れない。






To be Continued

投稿者からのコメント

……第2話寄贈したのだとばかり思ってました…;
再びこんな時間にすみません…。
流架ぴょんの出番はもう少し先かなと…;

では…。

2005.11.25